ブランドコンセプトを伝える名刺デザインへ。社名変更に伴うリニューアルの舞台裏

ブランドコンセプトを伝える名刺デザインへ。社名変更に伴うリニューアルの舞台裏

住宅・不動産ポータルサイト「LIFULL HOME'S(ライフルホームズ)」をはじめ、引越し情報サイトの運営、インテリア・家具の通販など、暮らし全般の事業を提供する“ライフデータベース&ソリューション・カンパニー”株式会社LIFULL様(旧 株式会社ネクスト)。社名変更に伴い、名刺デザインをリニューアルすることになりましたが、 ロゴからコーポレートブランドのコンセプトを伝えてきれていないこと、フルカラー印刷ではシンボルカラーを忠実に表現できないことが課題となっていました。

今回は、ブランドコンセプトを反映した名刺デザインができるまでの過程と、その後の効果について、クリエイティブ部 渡邊様にお話を伺いました。

渡した瞬間に伝わる「安心」と「信頼感」

2017年4月1日に社名を「株式会社ネクスト」から「株式会社LIFULL(ライフル)」に変更。 グループ企業100社100カ国の事業展開を中期スローガンに掲げ、LIFULLブランドを築き上げるため、2017年4月に社名、サービス名称、企業ロゴなどを一新。

「LIFULL」とは、世界中の人々の暮らしや人生(LIFE)を満たす(FULL)企業へと成長していきたいという想いをこめた造語。 ロゴマークは、LIFULLの「L」を組み合わせた通称「L字フォーカス」と呼んでいるシンボルマークと、ニュートラルなタイプフェイスを採用したロゴタイプで構成しています。シンボルマークは、世の中をよりよくするために、さまざまな物事にフォーカスを当てることをイメージしたもの。

社会のあらゆるニーズと向き合い、一人ひとりにぴったりの情報サービスを提供するLIFULLの姿勢を表現しています。
(引用元: https://lifull.com/brand/logo/

コーポレートメッセージを反映したロゴへ

―― 新しいロゴマークが誕生した経緯について教えてください。

実は、LIFULLは社名になる前からサービス名として存在しており、サービス展開用のロゴマークもありました。しかし、社名に展開できる設計になっていなかったため、今回のロゴ開発プロジェクトが発足する一年以上前から変更を考えておりました。

いざ社名変更プロジェクトが始まると、同時に社屋移転も行うといった想定外の要件が増え、時間やコスト面からロゴのデザイン変更を並行して行うことが難しく、フェーズを区切って変更することを考えていました。

しかし、トータルで見るとコストがかなり増加してしまうので、再度コストやスケジュールを調整し社内外の関係者の協力と理解をいただきつつ、一気に変更への舵をきりました。

「あらゆるLIFEを、FULLに。」を表現した名刺

―― どのようなコンセプトでロゴは作られたのですか?

ブランドメッセージをデザインに反映するためのコンセプトは「Simplicity、Borderless、Game-Changer」でした。これにはそれぞれ、

■耐久性があり、拡張性のある美しく力強いデザイン
■メディアに依存せず、全ての人種が理解できる、どんな世界でも再現可能なデザイン
■既成概念を壊し、今までにない新しいデザイン

というdesign criteria、つまり実際にデザインする上での方針・基準が背景にあります。
これを現在LIFULLのChief Creative Officer(CCO)の 川嵜が策定、クリエイティブディレクション、アートディレクションを行い、 ブランドデザインの開発を行いました。

―― 個性的なデザインの名刺ですね。印刷内容にロゴが重なっていますが。

「あらゆるLIFEを、FULLに。」というブランドメッセージや、様々な社会課題を解決していく企業姿勢を表現するために、「L字フォーカス」はさまざまな視点で物事を捉えるという意味を込めてデザインされています。「L字フォーカス」の可能性を的確に表現するために、名刺一枚一枚全て違うデザインにするアイデアがうまれ、そこからCCO、デザイナー、総務チームと、検証を重ね、最終版のデザインに定着させました。

結果的に運用面とコストの兼ね合いで1箱に20種類を5枚ずつ入れることになりましたが、前述のアイデアを落とし込むことができたと思います。 名刺交換をするタイミングって常に新しい出会いのはずなので、お渡しした方々に対して、常に新しい気持ちや、新しいご提案、新しいチャレンジを我々も意識できるように活用していきたいと思っています。

コストと品質のバランスを求めて

―― 用紙もこだわりを持って決められたそうですね。アラベールウルトラホワイトにした決め手はなんですか?

渡邊様:ロゴに使用しているオレンジをしっかりだすために「もっと紙は白く、厚く、質感があり、しっかりしたもの」という明確なイメージを持っていましたが、グループ関連会社も同じ名刺を使うため、それぞれの会社が許容できるコストと、理想の品質とバランスをとるために、営業担当の原田さんに何回も紙のご提案をいただきました。

営業担当 原田(以下 原田): はじめは会社案内と紙を合わせてヴァンヌーボにしようとか、人気のあるアラベールのスノーホワイトにしようとか、コスト重視でアラベールの類似品にしようとか、色々提案をさせていただきました。最終的にお選びいただいたアラベールのウルトラホワイトは最も白色度が高い紙なので、よりオレンジ色がはっきりしましたね。

渡邊様:この紙なら、LIFULLロゴのオレンジが絶対きれいに出ると思いました。私たちの主力サービスが情報サービスなので、ロゴが人の目に触れる環境はスマホやパソコンなどの画面で「RGB※」として映し出されます。紙はもちろん光を発しないのと、これまではCMYK※で印刷していたこともあり、指定のオレンジがCMYKの色空間では表現が不可能で、ロゴの色がすごく沈んで暗く見えました。Webで見ている色を紙で再現するために、印刷工場の方に何回も試作をお願いしましたね。

原田:コーポレートカラーの指定色が特殊な色で、蛍光色が入っているので印刷物にするのは難しいんですよね。コストのことを考えるとオンデマンド印刷もお薦めできましたが、特にオレンジはオンデマンド印刷で苦手とする色で、茶色っぽくなってしまう特徴があるのでオフセットになりました。

とにかくLIFULL様のご要望を叶えようとオレンジの色にこだわりました。最終的には、色校正を実施した上にさらに本番印刷の刷り出しにもお立会いいただいてご納得いただくまで色を見て決めて頂きました。山櫻は名刺の会社として認知されている会社です。ここは山櫻だからこそできたと言っていただけるよう、担当営業としてプライドをかけて対応させていただきました(笑)

実際山櫻ではオンデマンド印刷はもちろんですが、幅広い用紙やそれにあった様々な印刷方法をご提案できるところは他社にない点だと自負しています。お客様にご満足いただける製品をお届けするのが使命と思っています。

―― 新しい名刺になったときの社内の評判はいかがですか。

以前の名刺はロゴがあまり目立たなかったので、代表の井上は「もっと目立つようにしたい」と言っていました。しかし、なかなかしっくりくるものも無くてデザイナー陣はかなり悩みましたね…。ですから、ここまで大胆に変わり、オレンジの色もはっきりして、井上も「これだよね」と納得していました。最終的にコストは上がっていますが、とても満足のいく名刺ができました。ただ、型破りなデザインなこともあり、少々困惑している社員もいますが、社員全員の要望をこの面積の中に全て満たすことは出来ないので、LIFULLとして何が本当に必要かを説明し納得してもらうことで、より親しみをもって活用している社員もいますね

―― 名刺発注の運用面はいかがですか。

(発注者の)入力作業の負担を減らしたかったので、オペレーションをシンプルにすることを望んでいました。NAMEROOMは見た目もわかりやすく発注フローが非常にシンプルにできているのでとても使いやすいです。TELやFAXの接頭語をプルダウンにすることで、入力の手間を省くことができるなど、細かい点までシステムで対応できる点は非常に良いと思います。
今回納期が迫っているなか営業の方だけでなくサポートの皆さまにもスピーディにご対応いただき、とても助かりました。印刷もシステムも大満足です。ありがとうございます。

担当営業から一言

一見すると、奇をてらった面白い名刺を作りたいという企画案件に思えますが、その中身はお客様の思いが凝縮されたお仕事でした。 その思いをうかがって私自身もなんとかご要望にそうように作り上げたいという一心でご対応させていただきました。色々な提案をさせていただくと、それに対して様々なご要望を返していただけるので、また、私から提案して徐々に仕様を詰めていく過程は、大変でしたが、今までにない名刺作成運用ができあがる未来を思うととても楽しく仕事ができました。 できあがった名刺1箱の1枚、1枚を確認させていただいた時は、達成感でいっぱいでした。 発注システムですので作って終わりではなく、今後は安定運用を継続し、大量発注、変更の際には山櫻として誠心誠意対応致します。 山櫻は、名刺だけではありませんので、是非、封筒や手提げ袋などの紙製品やWebサービスも同様にご提案させていただいて作り上げていきたいですね。

取材後記

今回取材のためにお伺いしたLIFULL様のオフィスは、社名が新しくなったタイミングで築約50年のオフィスビルを一棟リノベーションした建物。ホームズ君が出迎える明るいエントランスを通り、おしゃれな社屋へ。名刺を初めて見た瞬間も、何か面白いことが始まりそうな感動でワクワクが止まらず、LIFULL様の風土を肌で感じることができました。名刺が完成するまでの様々な工程があるからこそ、受け取った相手に会社のカラーが伝わるのだと思いました。

【掲載日:2018年10月16日】

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