プロスポーツ業界のSDGs達成における具体的なアクション
導入の背景

株式会社VOREASの活動はチームの運営だけではない。電子チケットの導入やアプリによる会場キャッシュレス化、応援グッズで定番のハリセンのリユース・リサイクルプロジェクトの開始、引退した選手へファンが直接支援するNFT※によるデジタルコンテンツのリリースなど、従来の運営方法や価値観を見直し、常にアップデートしている。スポーツ業界初となるカーボンニュートラル実現を見据えた『GXリーグ基本構想賛同企業』に入ったことも注目のトピックである。
※NFT(非代替性トークン)…Non-Fungible Token(非代替性トークン)の略称。 暗号資産と同じブロックチェーン上でやり取りされる、偽造不可能な鑑定書と所有証明書が付いたデジタルデータのこと。
IT・デジタルの最先端技術を取り入れながら時代の潮流を読み、持続可能な社会を実現するために着実に邁進する、スポーツ業界に限らず注目すべき企業だが、名刺発注に「Web名刺発注システムNAMEROOM」を選んだ背景には同社の環境活動があった。商品として選手のユニフォームを販売しているが、商品ディスプレイとして使用するハンガーを環境に優しい紙から作ったエシカルハンガーに選定したことが山櫻との出会いである。
「スポーツチームという世の中へ啓蒙する立場ですが、発信するだけでなく、実際にアクションを起こしていこうとしていました。そこで、社員を巻き込んで会社の中から見直しを行うことになり、名刺も変える流れとなりました。」(池田氏)
木を一本も切らない紙 「GAクラフトボードFS」
紙の選定において、環境に良い製品であることが第一前提であった。また、デザイン面においても再生紙であることが一目でわかるボード紙のようなものを希望としていた。
初めに山櫻から提案した用紙は、和紙のような風合いだったため企業のイメージと合わず、何度か提案の場を重ねた。最終的に、デザイン性にも環境的にも納得がいく結論に辿り着くことになる。その紙こそ「GAクラフトボードFS」であった。

「デザイン性のこだわりは絶対に妥協したくない、でも環境配慮もこだわりたい。その両方のニーズに応えられたのがこの紙で、それが決め手となりました。」(池田氏)
GAクラフトボードFSは再生古紙100%FSC®リサイクル認証の紙素材。FSCリサイクルの基準はポストコンシューマー(市中回収古紙)70%以上である。再生古紙が全ての原料のため「木を1本も切らない紙材」とも言える。国産紙なので輸送時に排出されるCO2やコストも極力下げることにも成功した。
デザイン性を保つための影の立役者となったのが、名刺の中央に配置されたQRコードである。株式会社VOREASはスポーツチームの運営企業だが、環境事業も行っている。監督やコーチ、トレーナーはチームの情報ページやSNSを紹介し、社員は会社ホームページへリンクさせる、といったことも可能だ。名刺ではあえて載せず、シンプルかつデザイン性の高い名刺を作り上げた。
「情報を詰め込みすぎると、逆に目立たなくなってしまう。名刺で得られる情報には限りがある。最低限伝えたいことだけを入れました。」(池田氏)
今後の展望
「”環境問題”と言うと大きく受け取られがち。情報を受け取るだけでなく、関わり合い、普段の行動一つを変えていくことが重要と考えています。私たちが主体的になることで、その一歩に繋がれば。」(池田氏)
池田氏は、名刺の印刷現場を納入場所の付近に移せないか検討している。配送時に排出されるトラックのCO2削減がねらいだ。NAMEROOMは企業だけでなく、印刷会社がデータをダウンロードし、印刷する仕組みも確立されている。実稼働も遠い未来ではないだろう。

取材後記
イベントを通して排出される大量のごみ問題や、会場で観客に提供される大量の添加物が入ったジャンクフードなど、スポーツの持つポジティブなイメージに隠された問題に一石を投じる池田氏。鋭い着眼点から次世代の価値観が誕生することは間違いありません。上に立つ人の求心力の強さが、特徴的な名刺に表れていました。今後も株式会社VOREAS、北海道ヴォレアスの活躍に目が離せません。
【掲載日:2022年9月27日】



スポーツが持つ力は計り知れず、子どもたちに夢を、応援する人に希望や感動を与える。しかしスポーツにおけるポジティブな面だけでなく、見過ごされがちなネガティブな面に正面から立ち向かい、解決策を打ち立て、実行に移している企業がある。北海道旭川に拠点を置くプロバレーボールチーム”ヴォレアス北海道”は、プロスポーツチームとして世界初となる持続的な環境と経済を目指す「VOREAS GREEN DEAL宣言」を提唱。環境に対する意識を高く持つ企業が選ぶ、メッセージ性のある名刺について代表取締役社長 池田氏に話を伺った。